自分が好みのタイプの株 取引
投資目的や自己資金の額を考え、中長期的な観点から、いわば身の丈に合ったリスクを取るという投資の基本が見失われるようなことになれば、オンライントレードの健全な発展は望めません。
投資家の自己責任が強調される時代になったとはいうものの、証券市場の長期的な発展のためにも、過度の投機的取引を政策的に抑制することが望まれるのではないでしょうか。
オンライントレードの長期的な発展という観点からは、証券会社の経営基盤が安定することも非常に重要です。
しかしながら、今までのところ、オンライントレード専業証券会社を中心に赤字経営が続いているというのが実情です。
手数料を大幅に引き下げることでシェアを拡大し、経営を安定化させるというのが、オンライントレード専業証券会社の基本的な戦略だったようですが、なかなか思惑通りにはいかないようです。
その最大の要因は、膨大な広告宣伝費です。
オンライントレード専業の証券会社は、従来型の証券会社のように大きなコストのかかる店舗網や営業職員を持たないので、効率的な経営が可能になると考えられます。
その反面、知名度の低さを補うために、インターネット、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、街頭の看板など、あらゆる機会をとらえての広告宣伝を展開しなければならないのです。
もちろん、従来型の証券会社も活発な広告宣伝を行っていますが、投資家が道を歩いていれば店舗が目に入るということの宣伝効果も無視できません。
オンライントレード専業の証券会社の場合、証券会社側から投資家に対して積極的な投資勧誘をしないことが口座稼働率の低下につながるという側面も否めません。
業界におけるシェアが向上し、口座数が増加するにつれて、逆に平均的な稼働率は低下していくため、口座管理にかかるコストが増大していくのです。
伝統的な証券会社の場合、そうした状況になると担当者が投資家に直接電話などで取引を継続する意向があるかどうかを確認するといった方法をとりますが、人員を減らすことで効率的な経営をめざすオンライントレード専業会社では、そのようなきめ細かい対応は困難でしょう。
そもそも、オンライントレード専業の証券会社は、一定以上のシェアを確保すると、本来めざしていたような効率的な経営が難しくなるというジレンマにも直面しています。
口座数が増え、オンライントレードを行う投資家の裾野が広がるとともに、電話での問い合わせや発注など、インターネットだけのサービスでは完結しない場面が増えていきます。
いきおい、電話オペレーターの数を増やしたり、大規模なコールセンターを建設したりといった投資が必要となり、低コストで不特定多数へ向けて情報やサービスを送ることのできるインターネットを活かした効率的経営といううたい文句が、徐々に疑わしくなっていくのです。
わが国では、オンライントレード専業の証券会社は、まだ本格的にスタートしてから一年ほどしか経っていませんが、アメリカと同じような状況に陥ることは避けられそうもありません。
しかも、わが国の場合、アメリカとほぼ同水準にまで低下している格安手数料を今後とも維持できるかどうかは不透明です。
というのも、アメリカでは、取引一件当たり十ドルといった手数料水準を設定する証券会社は、多くの場合、クリアリング証券会社を活用して注文執行や受け渡し・決済といったコストのかかる業務を全面的に外部委託するとともに、マーケットーメーカーと契約して注文を回送する代わりに一種のリベート(ベイメントーフォー・オーダーフローと呼ばれます)を受け取るといった工夫を凝らしており、見かけの手数料水準から想像される以上に収益力は高いのです。
事実、すでに触れたように、一定の条件を満たせば手数料ゼロというエンパイヤ・ファイナンシャルのような証券会社も早くから登場していました。
これは、中小証券会社による特殊なサービスとしてあまり広がりませんでしたが、二〇〇〇年には、オンライン専業証券会社としては大手のアメリトレードが新サービス「フリートレードードットーコム」をスタートさせています。
これは、問い合わせ対応などのサービスを徹底的に省力化する一方、信用取引顧客への貸付による金利収入やマーケット・メーカーからのリベート収入、サイト上でアメリカの証券会社の一形態で、注文の受付、市場への発注、約定成立後の受け渡し・決済、顧客への報告や口座管理という証券取引の一連の過程を行うためのシステムを備えていながら、自ら最終投資家と直接接することなく、他の証券会社から業務のアウトソースを受けるというビジネスを展開しています。
DLJグループのパーシング、アメリトレード・グループのアドバンスド・クリアリングなどが有名です。
クリアリング証券会社と契約した証券会社(コレスポンデント証券会社と呼ばれます)は、大がかりなシステム投資を行うことなく、最先端のサービスを顧客に提供することが可能となります。
このため、アメリカでは、小規模な証券会社が多数存在し、新規参入も活発にみられるといわれます。
の広告収入などで収入を確保し、成り行き注文については手数料を全面的に無料とするというものです(指し値注文は取引一件当たり五ドル)。
一方、わが国では、クリアリング証券会社のような全面的アウトソースを請け負う会社はありませんし、注文を買い取るマーケットーメーカーも存在しません。
逆に、株式ブローカレッジ業務を手掛けるには、数億円かかるといわれる東京証券取引所の会員権を取得し、顧客から得た手数料の中から取引所への手数料(いわゆる場口銭)を支払わなければなりません。
わが国のオンライントレード専業証券会社の多くは、現在の赤字経営は先行投資負担が重いためで、将来展望は明るいと強気の姿勢です。
中には、今後は自社サイトを多数の人がアクセスするポータル(入り口)として位置づけることで、広告料収入なども得られるようになるので、フリートレードードットーコムのように株式売買委託手数料はゼロでも大丈夫、といった意見も聞かれます。
しかし、個別の投資家のニーズに合わせた投資アドバイスや自前のアナリスト、エコノミストによる投資情報などを売り物にしたブルーサービス証券会社をめざす大手証券会社など既存の証券会社が、当初から本格的にオンライントレードを展開しているわが国では、オンライントレード専業の証券会社は、アメリカ以上に厳しい競争にさらされているといえます。
既存の証券会社はすでに顧客基盤を確立しているので、新たな顧客獲得のために投じる広告宣伝費も新規参人組に比べれば低く抑えることが可能でしょう。
今後の事業展開が、オンライントレード専業証券会社側の思惑通りに進むかどうかは予断を許しません。
このように、オンライントレード専業証券会社の経営は楽観できるものではありません。
もちろん、各社とも、経営基盤の強化が急務であることは十分に認識しています。
J証券、S証券、D証券、A証券などが、株式公開の方針を発表したり、あるいは検討しているとの報道がなされているのはそのためです。
C証券のように、海外の大手投資銀行の傘下に入ることを表明する例も現れました。
アメリカでも、格安手数料を売り物にするオンライントレード専業証券会社には、大手銀行の傘下にあるものが少なくありません。
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